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3月6~7日にかけて、再度東シナ海のガス田開発に関する日中協議が行われた。この問題に対する私の考えは既に昨年11月の記事示してあるし、今回の結果をもってしても何も変わるところはない。
中国側が新たに提案した内容についても、少々意外ではあったが「中間線を跨いでの共同開発を」という日本の提案に対する一つの答えとして、ありうるものだと考えられる。だが、報道では領土問題と絡め「受入れがたい」とする主張が多かった。 ポイントは、①ガス田開発の中止とデータ提供を中国が再び拒んだこと、②新たに中国側が提案したものが尖閣諸島付近での共同開発を含むものであったこと、の2点のみである。①については、そもそも日本の申し入れの内容が極めて非常識であるという正しい認識さえあれば、当然の結果と受け止められるだろう。②についてはやや微妙だが、単に「時間稼ぎ」ととるか「検討に値する」ととるかで大きく立場は異なる。その後の報道によると、尖閣諸島の領海を含まないものであるということなので、領土問題と絡めて「受け入れるべきでない」というのは、極めて短絡的な主張であったといえる。 新聞各紙は3月8~9日にかけてこの問題を社説で取り上げたが、その中身には基本的な認識が不足しているものも見受けられた。今回は、各社説を論評してみた。 朝日新聞は3月8日の社説で東シナ海のガス田に関する協議について触れているが、その内容は単に日中での協議を続行させることを期待するに留まっており、ガス田開発の戦略に関する記述は見受けられない。どの新聞でも、読んでさえいれば誰にでも書ける文章であり、論評に耐えうるものではない。 http://www.asahi.com/paper/editorial20060308.html 日経の3月9日の社説は「共同開発は中間線付近に限定すべきだ」というタイトル。 http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20060308MS3M0800508032006.html 内容は散漫である。春暁ガス田の開発中止と開発データの提示を求めるという日本の要求が非常識であることに気付いておらず、「中国の対応に誠意が感じられないのは残念だ」と嘆いても意味がない。 今回の中国側の提案については「時間稼ぎと捉えられても仕方がない」と延べながら、後段では「尖閣諸島周辺は有望海域であると同時に、中国は同島を自国領と主張している」と中国側の戦略性に言及し、「安全保障上からも受け入れ難い」という。有望な海域ならば、領土問題にかかわらずその海域での共同開発も検討可能なはずである。まなぜ安全保障上問題となるのかの説明もない。よく吟味されていない文章の典型のようなものだが、結局は従来の日本の提案を是としているだけで、政府見解を追随しているに過ぎない。 とはいえ、さすがに日経は、日中間のEEZ(排他的経済水域)の係争の内容についてはきちんと把握しているように感じられる。 これに対して読売新聞の3月8日社説は、境界線の位置関係すら混乱している。「中国がEEZの境界を日中中間線だと認めるなら、開発海域は中国のEEZとなるが、中間線を認めない現状では係争中の海域だ」。これはトンデモない間違いである。中国が開発している海域は全く係争の対象から外れているのは明らかだ。意図的であれば、これは、読者を「中国=悪」というイメージに誘導する為の悪質なウソである。「日本と争いのない中国近海で行っている」という中国の主張は正しい。 社説の結語の「主権と権益を守る日本の意志を明確に示すことが、国際ルールに反した行動を中国に自制させることにつながる」は、基本認識が間違っているので、論理として成り立たっていない。 http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20060307ig90.htm 産経新聞は、二階俊博経済産業相の日中協調路線を叩いている。同氏の試掘否定発言に対して、「心配」というが、現状では日本単独での試掘は賢明な策とはいえない。しかも最後には「中国の既成事実化を許さないためには、日本も海上保安庁や防衛庁などが協力し、万全の体制で試掘が行えるよう準備を急ぐべきである」としている。これでは東シナ海を紛争の海にしたいように見える。 さらにいえば、「親中派の取り込みを狙う中国の分断工作には、重ねて警戒が必要だ」は、ほとんど妄想に近い。もっと問題の所在を吟味して、明確にした上でないと主張にすらならなない。 http://www.sankei.co.jp/news/060308/morning/editoria.htm 今回、最も良かった社説は毎日新聞だ。3月9日の「ガス田協議 熱くならずに粘り強く」は、問題の要点をしっかりと押さえている。EEZと領土問題が別物であることをはっきりと示している点や、中国が独自で投資し、開発を進めてきたガス田を中止できないこと、さらに東シナ海での開発が「埋蔵量やコスト面で採算が合うのかどうか」という指摘も極めて的を得たものだ。 ただ、今回の中国の提案に対して「わざわざ領土問題をからめてきた中国の対応は問題をこじらせるだけだ。日本は中国提案に乗る必要はない」という冒頭の主張は、情報が開示されていない段階ではしかたのないものであるにせよ、いささか拙速に過ぎたように思う。 http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20060309ddm005070114000c.html
by hensyutyo1
| 2006-03-10 19:04
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